2018年11月
アメリカのHHS(保健福祉省)疾病予防健康増進局が最新版の身体活動ガイドラインを公表しました。
この記事では身体活動ガイドライン改訂第2版を紹介します。
目次
- 身体活動ガイドラインとは
- 身体活動の効果
- 身体活動の強度
- 成人の身体活動ガイドライン
- 3歳から5歳の幼児(未就学児)の身体活動ガイドライン
- 子どもおよび思春期(6-17歳)の身体活動ガイドライン
- 高齢者の身体活動ガイドライン
- 妊娠中および産後1年の人の身体活動ガイドライン
- 慢性疾患または障害のある成人の身体活動ガイドライン
- 安全な身体活動ガイドライン
こちらのホームページで全文pdfがダウンロードできます。
118ページにわたるガイドライン。
7ページのサマリー版もあります。
身体活動ガイドラインとは
「身体活動ガイドライン」とは、
多くの研究論文を基に、どんな運動(どんな活動)をどれくらいの量やったら、健康にどんな良い効果があるのかを示した指針です。
ガイドラインに示した活動を行えば、一般的には良い効果があるだろうということが言えます。
もちろん医学に例外はつきものですが。
身体活動については以下の記事も参考にしてください。
身体活動の効果
ガイドラインでは身体活動が健康にもたらす効果として以下のようなものが挙げられています。特にうつ病の予防や改善、アルツハイマー病の予防などの脳に関する効果や、ガンに対する効果はここ数年でかなり明らかになってきたことです。
・全死亡率を下げる
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中、多くのガン、2型糖尿病、肥満、高血圧、骨粗鬆症の予防
・体重増加や肥満、高血圧、高脂血症などの病気の危険因子を減らす
・心肺持久力や筋力を増やして運動耐容能をあげる
・身体機能が向上し、可能な日常生活活動が増える
・うつ、不安、アルツハイマー病などを予防し、脳機能、認知機能を向上させる
・転倒の予防と転倒した時の骨折の予防
身体活動の強度
ガイドラインを読む時に「低強度」「中強度」「高強度」という身体活動や運動の強度についての用語が出てきます。
・「低強度」とは・・・3メッツ未満の運動。軽いウォーキングや普段の速さでの歩行、料理などの軽い家事が含まれます。
・「中強度」とは・・・3-6メッツの運動。時速4-6㎞程度でのウォーキング、テニス(ダブルス)、庭仕事などが含まれます。
・「高強度」とは・・・6メッツ以上の運動。ジョギング、ランニング、重いものを持ち運ぶ、何かを持って階段を昇る、雪かきなどです。多くの人は高強度の運動を日常的には行っていません。
2008年に出された初版のガイドラインでは、週に150分の中等度の運動(ウォーキングなど)と言われていました。
では、第2版2018年のガイドラインではどの程度の運動が推奨されているのでしょうか
成人の身体活動ガイドライン
・座る時間を減らして、今よりも活動しましょう。全く動かないより少しでも動いた方が良い。
座る時間を減らして中~高強度の活動をしたら健康に関する効果があります。
・週に150-300分の中強度の運動か、75分から150分の強い強度、または同等の組み合わせでの有酸素運動をしましょう。運動は一気に行うのではなく、週を通して行う方が良いです。
・週に300分の中強度運動に相当する運動を行うとさらに効果的です。
・週に2回以上、中強度から高強度の筋力トレーニングをすると、さらに効果的です。筋力トレーニングは全身の主要な筋肉のトレーニングが良いです。
3歳から5歳の幼児(未就学児)の身体活動ガイドライン
ガイドラインによると未就学児は身体活動によって正常な発達と成長が促されるそうです。
保護者と未就学児は、様々な活動の種類によって遊びの中で活動量を増やすように推奨しています。
子どもおよび思春期(6-17歳)の身体活動ガイドライン
様々な活動に参加して活動(運動)の楽しさを実感する重要な年代です。
1日当たり60分以上の中強度か高強度の活動をしましょう。
・有酸素運動・・1日当たり60分以上の中強度または高強度の有酸素運動を行い、そのうち週に3日以上は高強度の運動が良い。
・筋力トレーニング・・1日60分の運動の中に、週3日以上は筋力トレーニングを含むと良い。
・骨トレーニング・・1日60分の運動の中に、週3日以上は骨トレーニングを含むと良い。※骨トレーニングとは地面からの衝撃が骨に伝わるような運動のこと(ランニング、縄跳び、バスケットボール、テニスなど)
高齢者の身体活動ガイドライン
成人に対して推奨される運動は高齢者に対しても推奨されます。高齢者は以下の点も注意しましょう。
・1週間の運動の中には、有酸素運動、筋力トレーニングの他にバランストレーニングも含むと良いでしょう。
・現在の状態によって運動量や強度は調節しましょう。
・慢性的な病気の状態などに対して安全な身体活動かどうかを注意しましょう。
・現在の状態によって週に150分の中強度以上の活動ができない場合、現在の状態に応じてできるだけの身体活動を行いましょう。
妊娠中および産後1年の人の身体活動ガイドライン
・週に150分以上の有酸素運動を行いましょう。有酸素運動は一気に行うのではなく、週を通して行うのが良いです。
・日常的に高強度の運動をしていた人や妊娠前よりも運動量が増えた人は、妊娠中および産後1年はその運動を続けましょう。
・妊娠中は常に専門家の観察(診察)と指示を仰ぐべきです。妊娠中と産後は行っている(行おうとしている)身体活動が適しているかどうかを常に確認してもらいましょう。
妊娠中の運動ガイドラインには別のものもあります。
慢性疾患または障害のある成人の身体活動ガイドライン
・可能であれば成人に推奨される身体活動と同じレベルを行いましょう。
・可能であれば成人に推奨される筋力トレーニングも行えばさらに効果的です。
・成人に推奨される身体活動ができない場合、可能な限りの身体活動を行い、不活動になることは避けるべきです。
・慢性疾患やその徴候のある人は、専門家の指示を仰ぎましょう。医師に健康状態を確認してもらい、身体活動については各自に適している活動の種類や量を運動の専門家(理学療法士など)に相談しましょう。
安全な身体活動のガイドライン
・どんな人も身体活動を行うリスクを理解すべきである。
・現在の状態や目標に適した身体活動の種類を選びましょう。
・身体活動量は徐々に増やしましょう。初めに活動的ではない人は、弱い身体活動からはじめ、だんだんと運動強度や時間を増やすようにしましょう。
・いつ、どこで、どのように運動を行うのかを慎重に考え、使う道具や環境を安全なものにし、道具などの使用方法は必ず守りましょう。
・慢性疾患やその兆候のある人は、専門家の指示を仰ぎましょう。医師に健康状態を確認してもらい、身体活動については各自に適している活動の種類や量を運動の専門家(理学療法士など)に相談しましょう。
膨大な量の身体活動ガイドライン。これは「アメリカ人のための」というタイトルがついていますが、どんな年代、どんな人種にも適しているとされています。
私も新年度からこの身体活動ガイドラインに沿った運動をしてみて効果を検証しようと思います。その結果はまたこのブログで報告します。