前回に引き続き睡眠に関する研究の紹介です。
この記事では、睡眠不足と不整脈(心房細動)の関係を調べた研究を紹介します。
前回の記事はこちら。
このブログでもたびたび取り上げている心房細動という不整脈。
突然死を引き起こすような不整脈ではありませんが、
脳卒中を引き起こす厄介な不整脈です。
また全ての不整脈の中で最も多いと言われています。
心房細動についてはこちらでも解説しています。
睡眠不足は不整脈を引き起こす?
研究はアメリカのピッツバーグ大学Genualdi医師を中心に行われました。
論文はCHESTという心臓や呼吸器に関する超有名医学雑誌に掲載されています。
1995年から2015年にかけて3万人以上に対して睡眠ポリグラフ検査と12誘導心電図検査を継続的に行いました。
睡眠ポリグラフ検査とは、睡眠障害の診断に用いられる検査らしいです。
12誘導心電図とは、健康診断の時にやる心電図検査と同じです。
心臓を3次元に12方向から見て、不整脈や虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞)の発見をします。
有名誌に載る研究って規模が大きいね・・。
ロジスティック回帰分析とコックス比例ハザードモデルを使って、
睡眠時間と心房細動の罹患および発症の関係を分析しました。
罹患(りかん)とは既に心房細動が存在している状態(prevalence)。
発症とは心房細動を新たに発見した場合(incidence)。
交絡因子として、年齢、性別、BMI、高血圧、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、睡眠障害を調整しています。
参加者の平均年齢は51歳で51.6%が女性でした。
約3万人の参加者のうち、
404人が心房細動に罹患しており、
1820人が新たに心房細動と診断されました。
追跡期間の中央値は4.1年でした。
睡眠時間と心房細動を分析した結果、次のようなことがわかりました。
睡眠が1時間減る毎に、心房細動の罹患が1.7倍多くなる・・・。
睡眠が1時間減る毎に、心房細動の発症が1.09倍多くなる・・・。
もちろん交絡因子を調整した後のデータです。
つまり、性別や年齢や既往歴に関わらず、
睡眠時間が少ないと心房細動の罹患や発症が多くなるということです。
新しい論文なので、無料でAbstractしか読めないので、睡眠時間の中央値などはわかりませんが、
睡眠時間が少ないことと不整脈の発症は関係がありそうです。
それがなぜか・・・(ここから下の1段落は私の推測です)。
それはハッキリしませんが、交感神経の活動が強い状態が続いていると慢性的な炎症が進行し、
その炎症が心房細動を引き起こすことがわかっています。
睡眠不足の原因にもよりますが、
仕事などで睡眠が短くなることが多いのではないでしょうか。
そうすると、緊張感やストレスから交感神経が働きやすくなり心房細動の発症につながるのかもしれません。
論文では、睡眠時間を伸ばすことが心房細動の発症を少なくするかどうかは、さらなる研究が必要だと言っています。
今後の研究が楽しみ。
引用元