新型コロナウイルスは見事にゴールデンウィークと夏休みを直撃しましたね。
感染が収まってきた国でも再び感染が拡大しておりますが、
第1波の時と違うのは、少しずつcovid-19についてわかることも増えてきたんじゃないでしょうか。
毎日covid-19に関する多くの論文が出されています。
どうやったら予防できるのか、どんな薬が効きそうか、ワクチンの試験結果はどうか、といった論文が多いですが、
ここ1か月くらいで急に増えてきたテーマがあります。
それは新型コロナウイルスの後遺症に関する論文です。
未だに、「普通の風邪だ!」とかいう人もいるようですが、
どうやらこのウイルス感染症は深刻な後遺症をもたらす可能性があるようなのです。
後遺症は、長く倦怠感が続くとか、呼吸困難感が続くとか、そういう症状が多いみたいです。
しかし先日JAMAに発表された論文は、covid-19感染症は心臓にも後遺症を残すんじゃないかという内容でした。
その論文を紹介します。
covid-19感染症が心臓に残す後遺症
ドイツのフランクフルトにある病院で行われた、前向き観察研究です。
PCR検査によって新型コロナウイルス感染症と診断された人100名を対象に、感染症回復後の経過を追いました。
回復後に心臓のMRI検査や血液検査を行っています。
対象者の年齢中央値は49歳、四分位範囲は45-53歳でした。
53%が男性、67%が自宅療養、33%が入院が必要だった人でした。
同時に、年齢が同程度の健康な人、また年齢と基礎疾患をマッチングさせた対照群、それぞれ50人、57人に対して同じ検査を行っています。
covid-19感染からの回復者が、covid-19感染症と診断されてから、上記の検査を受けるまでの期間の中央値は71日でした。
もちろん、全員が退院しています。
血液検査の結果、
トロポニンTやCRPがcovid-19回復者で有意に高いことが明らかとなりました。
CRPは炎症の指標、トロポニンTは心筋細胞破壊の指標です。
covid-19感染を起こした人は、心筋に炎症反応が起きていると言えます。
また心臓のMRIの結果、
covid-19感染歴がある人は、左室が大きく、左室から送り出す血液の量も少なく(左室駆出率)、心筋の線維化の指標も高くなっていることがわかりました。
どういうことかと言うと・・・
左室というのは、心臓の左心室のことで、左心室から全身に血液が送り出されます。左心室から血液が送り出されないと、心臓に血液が溜まり、左心室は広がっていきます。
つまり、左心室が広がっていたり、左心室から送り出す血液の量が少ないという事は心臓の機能が悪いと言えます。
covid-19感染歴がある人は、健常者と比べても、同じような基礎疾患がある人たちと比べても、心臓の機能が悪くなっていることがわかりました。
さらに、心筋の細胞が破壊されたり、機能が悪くなって心臓か拡張したりすると、心筋が線維化していきます。
筋肉と言うのはゴムと同じで伸び縮みをして仕事をしますが、
「線維化」して固くなると、その仕事ができなくなります。
心臓のMRI検査から得られる心筋の線維化の指標も、covid-19感染歴のある人で高くなっていました。
つまり、心筋が線維化している可能性があるのです。
そして、これらのほとんどの結果は、
年齢や基礎疾患、covid-19感染症の重症度、診断からの期間などとは独立して現れました。
どういうことかというと、
どんな年齢でも、どんな重症度でも、基礎疾患があってもなくても、
covid-19感染症により、心臓への後遺症が現れる可能性があるということです。
covid-19の恐ろしさ。
それは、
「潜伏期間が長く、無症状の人も多い」という感染力の高さ。
に加えて、
感染症から回復した後に後遺症に悩まされることがある。しかも年齢、基礎疾患、重症度関係なく。
という事が言えそうです。
果たして、「普通の風邪」で年齢や重症度に関係なく「後遺症」が生じるでしょうか。
やっぱり感染しないように予防することが大事だってことですね。
さて、この研究は感染症と診断されてから2か月程度の人を対象にしたものです。
半年後、1年後の経過を追っていけば多くの人が「後遺症」も回復しているかもしれません。
それがわかるのは、まだ先の話。
引用元