学会の選び方と参加の仕方

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研究に携わる以上、学会や論文で成果を発表することは義務なわけであります。

しかし、研究をするしないに関わらず、

医療・医学に接する人は、学会に行くことをお勧めします。

 

ということで、学会の選び方、参加の仕方についてまとめました。

この記事は2019年9月15日に修正・追記しました。

 

目次

1.なぜ学会に行く必要があるのか

そもそも、なぜ学会に行く必要があるのでしょうか?

医学の半減期は5年。

5年間で半分の内容が変わると言われています。

大学1年生の時に学んだことの半分は、就職2年目には変わっているんです。

 

ほんまかいな???

 

実際には大学で学ぶことは基礎的なことが多いので、そんなには変わらないのです。

しかし、新しい情報が次々に出てくるのは事実。

 

では新しい情報はどこから出てくるのでしょうか?

 

医学の新しい知見が本になるのは、その知見が初めて世に出てから最低3-4年はかかります。

では、新しい知見はどこで出るのでしょうか?

 

研究で新しい知見が出たら論文にします。

研究が終わってから論文になるまで大体1年くらいです。

多くの場合、研究者は論文が世に出る前に学会で知見を発表します。

 

学会とは最新の情報交換の場であり、討論の場です。

学会に参加することで自分の知識をアップデートできるのです。

 

2.学会の選び方

では、どのように学会を選べばいいのでしょうか。

 

学会を選ぶ基準は、

1.分野

2.場所

3.参加費

を考えるといいと思います。

 

1.分野

まずは自分の所属する団体や施設に関係する学会に行くことが良いと思います。

例えば、

整形外科医なら「整形外科学会」

理学療法士なら「理学療法学会」

慢性期病棟に努めているなら「慢性期医学学会」

などです。

 

しかし、実際はちょっと違う分野の学会や、

他職種が参加する学会に行くこともおススメです。

 

知識の幅が飛躍的に広がります。

同じことでも、専門分野が違うだけで見方が違ったりします。

 

例えば、医師が看護師や社会福祉士など他職種と話をしたり、

医療の視点で考える研究者と、行政や経済的な視点で考える研究者の討論など、

違う職種、違う分野、違う視点での討論は思っているよりも得るものが多いです。

お互いの専門性の良さを認識しあることで、とても良い討論ができ新たな視点を身につけることができるのです。

 

2.場所

学会は年に1回や数年に1回開催されます。

いわゆる「全国○○学会」「日本○○学会」と言うものは、

数千人から数万人が集まります。

そして、毎年どこかの都市が選ばれて行われるのです。

国体みたいな感じです。

近いところで開催されれば行きやすいですし、

学会を機会に遠いところに旅行をするのも素敵です。

実際に、国内の学会であれば東京以外では、北海道や沖縄で開催されるときに人が集まりやすいですし、

国際学会ではハワイで行われると他の都市で行われるときよりも人が集まるらしいです。

学会に参加する時に、場所はとても重要なのです。

交通費も気にしてくださいね。

 

3.参加費

学会には参加費がかかります。

相場は・・・

国内の学会であれば数千円から1万円程度。

国際学会は日本人は安くても2万円。高いと6-8万円かかります。

・・・高いほどケータリングなども豪華なイメージはあります。

「日本人は」と言うのは、多くの学会が経済的に豊かな国と貧しい国で費用を分けているからです。

 

さて、学会にかかる費用は主に参加費や交通費、そして宿泊費と食費です。

例えば1泊2日で地方の学会に行くと、総額3万円-5万円くらいかかることもあります。

そこで、事前にチェックすべきことは職場で学会参加を出張として認められるかどうかです。

出張として認められると、交通費、参加費、宿泊費は職場の費用で捻出できるからです。

私が初めに勤めていた病院では、学会発表する時のみ出張扱いにしてもらえました。

出張扱いにしてもらえるかどうかで、積極的に学会に参加するかどうかが変わりますね。

 

おまけ

一度参加してみて、勉強になったと思う学会、仲間ができた学会、発表してみようと思える学会だった場合・・・

ぜひ次の回も同じ学会に参加してみてください。

そして、その時には自分の目標を立ててください。

「質問をする」「発表をする」「研究者仲間をつくる」などです。

学会はスポーツ選手で言うところの大会と同じです。

自分と勝負する場であり自分を成長させる場であるのです。

 

ただ、学会にもいろいろあります。

一度行ってみてあんまりかな・・・と思った学会は次は行かなくていいでしょう。

時間もお金もかかりますので。

 

3.学会の中身・スケジュール

学会はどんなスケジュールが組まれているのでしょうか。

多いのが、講演、シンポジウム、発表、セミナー、企業展示で構成されています。

 

その道の先駆者や重鎮などの話を聞きたければ、講演に参加するのが良いと思います。

同じような分野の研究者が最先端の知見について討論をするのがシンポジウムです。

どんな参加者も主体的に参加できるのは発表です。

発表にはポスター発表口述発表があります(下で解説)。

そして、技術的なことを教えてもらえるセミナーや、

企業による最新製品の展示などもあります。

企業が主催のランチョンセミナーは、お昼ご飯を食べながら企業の話を聞くものです。

大きい学会での大きい会社が主催するランチョンセミナーでは豪華なお弁当が出たりしますよ。

 

学会に何時から参加して何時に帰るかは自由です。

事前にホームページでスケジュールを確認して参加しましょう。

また発表や講演の抄録がホームページで公開されていることも多いです。

興味のある発表を事前にチェックしておきましょう。

学会ではあまりにたくさんの情報を得ることができます。

中にはボイスレコーダーで録音をしている人もいます。後で聞くのでしょう。

 

4.どのように学会に参加するか

実際はどんな学会に参加するかよりも、

どのように学会に参加するかが大切です。

 

受け身で参加するのか、

攻めの姿勢で参加するのか。

 

講演や発表を聞いて情報を収集するのが受け身での参加です。

はじめて学会に参加する時などは、雰囲気にものまれてどうしても受け身になりますね。

私もそうでした。

どの人も頭が良さそうに見えて・・・。

受け身での参加でも得るものはたくさんあります。

どれだけインプットして、得た知見をその後どのように生かすのかが大切です。

 

しかし、学会の醍醐味はやっぱり攻めの姿勢での参加。

攻めの姿勢での参加は・・・

他の人の発表に積極的に質問したり、

自分が発表したり。

 

自分で発表すると、自分の研究や意見に対してたくさんの意見をもらえるので、

受け身での参加の何倍も学ぶことがあります。

それでは最後に学会発表について少し。

 

5.学会発表

 

発表形式には口述発表ポスター発表があります。

 

自分が発表する場合、

口述発表の方が実績としての価値は高いです。

そして、口述発表の方が聴く人が多いので自分の研究成果を多くの人に知らせることができます。

 

ポスター発表の利点は討論のしやすさです。

ケータリングなどを食べながら自由に討論することが多いです。

そこでは、密なディスカッションができます。

自分の聞きたいことを聞くことができます。

また、名刺交換などで研究者のネットワークを作ることもできます。

しかし、多くの人に研究成果を報告することができないので、

討論ができるかどうかは、ポスターの見た目や内容の他、運も関係します。

時間内に1つも質問がもらえないということもあります。

 

自分が発表しない場合は、学会に参加したら必ず質問をするといいと思います。

教育講演などに参加して一方的に知見を得ることもいいと思いますが、

口述発表やポスター発表を聞いて質問をすると、

自分の印象にも残るし、研究者が発表で言えなかった情報を聞けるかもしれません。

そして研究者のつながりができていきます。

私も研究者のつながりはほとんど学会でできたものです。

 

口述発表とポスター発表の違いはこちらの記事にまとめました。

学会発表 口述発表とポスター発表の違い

 

学会は出会いの場です。

 

研究者としてのキャリアが積み重なってくると、学会で顔が知られると同時に、

多くの研究者と顔見知りになります。

その結果、学会が同窓会のような再会の場になります。

学会よりも懇親会や夜の飲み会を楽しみに参加する人も多いです。

医学や医療、福祉に携わる人は、多くが病院や施設で働いていると思います。

病院や施設と言うのはとても閉鎖的な環境です。

そこには独特のルールがあり、独自の階層性があり、世間の常識ではないことが常識であったりします。

医療や福祉の専門職は特に外とのつながりがなくても業務が成り立ってしまうこともあります。

すると、どんどん知らないうちに井の中の蛙になりかねません。

学会は、外の世界に出られる一番身近な機会です。

病院や施設に引きこもらずに、外に出ていくことで自分にも職場にも多くの恩恵がもたらされます。

 

ぜひ学会に行ってみてください。

 

よければこちらの記事も読んでください。

国際学会でのコミュニケーション

 

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