前回の記事で身体活動ガイドラインを紹介しました。
ガイドラインの序文の中に、「運動はしないよりした方が良い。いつ始めても遅くない」という文章があります。
果たして本当なのでしょうか。
2019年3月にJAMAに掲載された論文を紹介します。
アメリカで行われた大規模な前向きコホート研究です。
キーワードの一つはLeisure-time physical activityといって、
「余暇時間の身体活動量」です。
仕事や家事以外の時間にどれくらい身体活動をしているのかが、「余暇時間身体活動量」です。
例えば、フットサルのチームに入っていたり、趣味でサイクリングに行ったりといったことが含まれます。
中年期(30-60歳代)の余暇時間身体活動量が多いほど、心血管疾患になりにくいというデータがあります。
そんな働き盛りの時に運動なんてできないよ・・・。
仕事と子育てに追われてどんどん年ばっかり取って・・・。
やっぱり運動は若い時に初めて、長く続けないと健康に対する効果はないのでしょうか。
例えば・・・
50歳になりました。
やっと子どもが落ち着いたんやけど、やっと自分の時間を持てるようになったんやけど、
今から運動したのでは遅いのかなあ?
そんな疑問について調べた研究です。
1995年から1996年に登録された31万人程度のデータを分析しています。
それらの対象者の余暇時間身体活動量と、
全死亡率、心血管疾患死亡率、ガン関連死亡率を調べました。
2015年までに約7万人が死亡し、約2万2千人が心血管疾患、約1万6千人がガン関連死亡でした。
余暇時間身体活動と死亡率の関連は、
余暇時間身体活動が多いほど、死亡率は小さくなりました。
この研究では、身体活動量の変化と死亡率の関連も解析しています。
若い時の余暇時間身体活動量を維持できた人は、
余暇時間身体活動量がない人に比べ、
全死亡率が0.64倍。
心血管疾患死亡率が0.58倍。
ガン関連死亡率が0.86倍でした。
やっぱり若い時に運動を始めて、続けるのってとっても大事なんですね。
では、身体活動を始めるのが遅かった人。
多くは50歳代ころに身体活動を始めた人はどうだったのでしょうか。
余暇時間身体活動量がない人に比べて、
全死亡率は0.65倍
心血管疾患死亡率が0.57倍
ガン関連死亡率が0.84倍でした。
運動を始める年齢が遅くても、十分に身体活動の効果があることがわかります。
「運動を始めるのは、いつでも遅くないのよ」という結論。
そして若い時から運動している人は、できればその運動を続ける努力をしましょう。
と言うことでした。
今は忙しくて運動できなくても、できるときになったら運動を始めたらいい。
それでも十分に健康に対する効果がありますよ。
忙しい日本人にとって神様のような論文でした。
引用元
全文ダウンロードできます。