思春期を座って過ごすと18歳でのうつ病リスクが上がる

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研究にも流行りすたりがあります。

 

このブログでも度々取り上げていますが、身体活動や運動に関する世界の流行りは「うつ病」そして「若年者」な気がします。

 

アメリカでは「身体活動(運動)の効果」として一番最初に挙げられるのが「うつ病の予防」なのです。

 

Lancet Psychiatryに身体活動とうつに関する新たな論文が掲載されました。

世界的に二十歳前後のうつは問題になっています。

もともと死亡率の低い年代ですが、多くの先進国で「自殺」が死亡原因の上位になる年代でもあります。

10歳代での身体活動量が18歳の時のうつ発症を予防できるかどうかを検証した研究です。

思春期に身体を動かすと18歳でのうつ発症を予防できる?

イギリス南西部で行われた、the Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenという研究の参加者を対象にしています。

参加者に対して、12歳、14歳、16歳の時に身体活動量を加速度計を使って測定し、

18歳の時にClinical Interview Schedule-Revised(臨床面接スケジュール改訂版)を使ってうつ病かどうかの診断を行いました。

18歳の時にうつ病かどうか検査を受けたのが4257人。

身体活動量を縦断的に測定できたのが、

12歳の時点で2486人、

14歳の時点で1938人、

16歳の時点では1220人でした。

 

身体活動量とうつ病の診断の関係について、回帰分析とgroup-based trajectory modelling(集団軌跡モデル)によって分析しています。

 

結果。

 

まず、12歳から16歳になると、

軽い強度の身体活動量は減少していました。

12歳の時の軽い強度の身体活動量は1日当たり約325分。

それが16歳になると約244分に減少しています。

ちなみにこの論文での「軽い身体活動」とは「ゆっくり歩く」レベルです。

何と12歳から16歳になる4年間の間に1日当たり1時間半程度も歩かなくなっていのです・・・。

これはこれで恐ろしい結果。

 

歩けよ。

 

 

じゃあ歩かなくなった時間はどこに費やされているのか?

中程度から強い身体活動(早歩きから走る程度)の量は変化がありませんでした。

 

その代わり、

座っている時間が、

12歳では1日当たり約430分だったのに対し、

16歳では523分にまで増えているのです。

約1時間半歩かなくなったの分、約1時間半座っているのです

 

 

座学が増えるんですかね?

数学とかその4年でめっちゃ難しくなるもんね。

 

 

 

もちろんこれは平均値なので実際にはいろんな人がいるわけですけれど、

じゃあ10歳代前半から中盤での身体活動量が、18歳でのうつ病の診断とどう関係しているのでしょうか。

 

その関係を検証した回帰分析の結果、

12歳での「軽い」身体活動量が1日当たり60分増えるごとに、18歳でのうつ病と診断されるリスクは0.9倍に減りました。

つまり、12歳の時の軽い身体活動量が多ければ多いほど、その6年後にうつ病と診断される可能性が減るのです。

また18歳でうつ病と診断されるリスクは、60分軽い身体活動が増えるごとに14歳では0.92倍16歳では0.89倍に減りました。

どの年齢でも歩く時間が多ければ多いほど将来うつ病と診断される可能性が減りました。

 

一方、「座っている時間」との関係はその逆です。

座っている時間が60分増えるごとに、12歳では1.11倍14歳では1.08倍16歳では1.11倍、18歳になった時にうつ病と診断されるリスクが増えました。

この研究では回帰分析の他、集団軌跡モデルによっても分析していますが、その結果は回帰分析とほぼ同じような結果でした。

 

以下にもう一度まとめると、

・12歳よりも14歳、14歳よりも16歳の方が低強度身体活動量が低下し、座位時間が増える。

12歳から16歳での座位時間が多いと18歳でのうつ傾向が強い

12歳から16歳での低強度身体活動量が少ないと18歳でのうつ傾向が強い

というのが本研究の結果でした。

 

日本で言えば中学生から高校生になるくらいの時期にしっかり身体を動かす時間を作ることが、成人になる時の精神的な健康のために大切だということですね。

スポーツも大事かもしれないけれど、自分の子どもには歩く習慣をつけさせよう。

 

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嫌味のないデザインが良いですね。

 

 

今回紹介した研究はLancetから。

以下のリンクから全文pdfをダウンロードできます。

Kandola, Aaron, et al. “Depressive symptoms and objectively measured physical activity and sedentary behaviour throughout adolescence: a prospective cohort study.” The Lancet Psychiatry (2020).

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