運動とお薬、高血圧に効果があるのは?

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 目次

 

1.高血圧のお薬

高血圧。

 

どれくらいの年齢から血圧は気になるようになるのでしょうか。

 

健康診断で・・病院で・・・。

気になったころには血管はだいぶ傷ついているかもしれません。

高血圧は心臓病や脳卒中など多くの病気の原因。

世界の死亡原因の1位です。

本当の死亡原因ランキング

 

高血圧になったらどうなるのか。

 

そもそも高血圧になるということは、ある程度動脈硬化が進んでいると考えられます。

血圧が高いとさらに血管に負担がかかって動脈硬化も進行する。

悪循環ですね。

 

じゃあどうするのか。

 

一般的にはお薬が処方されます。

 

血圧を下げる薬はたくさんあります。

 

例えば、

アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)

カプトプリルなど。

アンギオテンシンⅠというホルモンがアンギオテンシンⅡになり血管に作用すると血管が収縮して血圧があがります。

ACE-IはアンギオテンシンⅠからⅡに変わるのを邪魔するお薬ですね。

 

他には、

アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

ディオバンやミカルディスなど。

有名どころですね。

アンギオテンシンⅡが血管に作用するためには、アンギオテンシンⅡが血管の受容体に取り込まれる必要があります。その受容体に入り込んでアンギオテンシンⅡの作用を邪魔するお薬です。

 

そして、

カルシウム拮抗薬(カルシウムイオンチャネル阻害薬)

アムロジンやベルベッサーなど。

血管が収縮して血圧をあげるためには血管の筋肉にカルシウムイオンが入り込む必要があります。その通り道を邪魔するお薬。

 

実にたくさんの種類のお薬があるわけなんです。

 

高血圧にはお薬!

というのが第一選択のようですが、実は血圧を下げる方法は他にもあるんです。

 

2.運動とお薬、高血圧に効果があるのは?

運動と薬

高血圧に対する効果を比較した研究が発表されました。

 

391本の過去の研究を分析。

メタアナリシスという手法です。

メタアナリシスについては過去の記事を参照ください。

超低カロリー食によるうつ病への効果

 

運動とお薬、どっちが高血圧に効果があったのか。

 

ここでのお薬とは先ほど紹介した、ACE-I、ARB、カルシウム阻害薬です。

運動とは、持久力運動レジスタンストレーニングです。

持久力運動とはランニングなど。

レジスタンストレーニングは筋トレです。

 

結果は、運動もお薬も血圧を下げる効果がありました

 

やったね!!!

 

運動とお薬を比べると・・・

 

対象者が高血圧の人でない場合、

お薬の方が運動よりも血圧を下げる効果がありました

 

さすがだぜ。

 

しかし、

対象者が高血圧の人(最高血圧が140mmHg以上)の場合、

お薬と運動で血圧を下げる効果に差がありませんでした

 

現状では、「高血圧にはお薬!」ですが、

高血圧に対しては運動もお薬と同等の価値があるかもしれません。

 

お薬って飲み始めたら一生のみ続けなあかん気がするけど、

もしかしたら運動で代用できるのかも。

 

と思ってしまいますが、運動とお薬の研究はそもそも質が違うような・・・

 

3.運動の研究とお薬の研究の違い-プラセボと盲検化-

お薬の効果を明らかにする研究ではプラセボという偽薬を使います。

偽薬を飲んだ人と本物を飲んだ人で効果を比較すればよいのです。

「お薬の効果」なのか「お薬を飲んだことによる効果」なのかを明らかにできます。

身体がしんどかったのに病院に行ったら楽になった!みたいなことありますよね(何にも治療してないのに)。

本当のお薬の効果を確かめるためには偽薬(プラセボ)を飲む人と本物を飲む人を比較する必要があります。

さらに、検査者も被験者も自分が本物のお薬を飲んだのか、偽薬を飲んだのかを知らせずに検証できます。

これを二重盲検化と言います。

 

しかし運動では偽運動はありません。

「運動する群」「運動しない群」で比較するしかないのです。

 

「運動する群」に当たった人は、知らず知らずのうちに生活習慣も変わってしまうかもしれません。

例えば、マラソン大会に出ようと思って週に1回ランニングの練習をします。

何週間かするうちにだんだんと身体も軽くなってきます。

体重も減ってきます。

すると、さらに効果を出そうという潜在意識が働いて、食事や睡眠などの生活習慣も自然と改善されていくことがあります。

この時点で、運動だけの効果ではなくて食事や睡眠の効果も混ざっています。

これをバイアスと言います。

もちろん研究で運動の効果を証明する場合、これらの要因を交絡因子として調整すればよいのですが、お薬の研究ほど厳密にはできません。

そして何より運動の研究では盲検化ができません・・。

だって、運動しているかどうかは検査者も被験者もわかるからです。

「運動した群」に入った人は、運動するしかないのです。

知らず知らず運動していたということはありえません。

 

ということで、運動とお薬が同じように高血圧に効果があるかどうかはこの研究だけでは十分でないかもしれません。

 

でも運動も今まで思われていたよりも効果がありそうな感じですね。

高血圧に対して、お薬だけではなく運動も選択肢になるのは間違いないでしょう。

 

引用元

https://bjsm.bmj.com/content/early/2018/12/05/bjsports-2018-099921

Naci, Huseyin, et al. “How does exercise treatment compare with antihypertensive medications? A network meta-analysis of 391 randomised controlled trials assessing exercise and medication effects on systolic blood pressure.” Br J Sports Med (2018): bjsports-2018.

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