出産した人は脳卒中になりやすい?

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子どもを授かることはとっても幸せなこと。

 

しかし同時に母体には相当な負担がかかるものです。

 

子どもが生まれればその負担は終わりというわけではなく、

子どもを産んだ身体は傷だらけのまま、育児と言う戦争に突入するのです。

 

出産を経験した人とそうでない人で、病気になりやすさを比較した研究の紹介です。

 

どんな病気かというと、脳卒中や心臓病などの心血管疾患。

 

研究方法はメタアナリシスという方法を使っています。

 

メタアナリシスは最も高いレベルでエビデンス(医学的根拠)を構築できる研究方法です。

 

メタアナリシスを使ったこんな論文も紹介しています
下の記事ではメタアナリシスとは何かについても簡単に説明しています。

超低カロリー食によるうつ病への効果

 

この記事で紹介する研究では、経産婦(出産を経験した人)と心血管疾患に関する10個の研究データを改めて検証しています。

それらの論文が掲載されたのは1987年から2018年です。

 

10本の研究が行われた国の内訳は、

スウェーデンが1本、アメリカが4本、中国が2本、イギリスが2本、ヨーロッパ10か国が1本です。

研究データの対象者には、おそらく多くの人種が含まれています。

 

それらのデータを合わせると14万8000人程度が心血管疾患を発症していました。

 

そして、経産婦と心血管疾患の関係は・・・・

 

経産婦はそうでない人と比べて、1.14倍心血管疾患になりやすいことがわかりました・・。

 

「妊婦」でなく「経産婦」と言うところが、この研究の重要な点だと思います。

 

妊娠している時(妊婦)は、身体の中に別の命がいて、

母体は自然とその新たな命を守ろうとします。

そのため、母体には様々な危険が伴うのです。

 

しかし、「経産婦」は「出産を経験した人」です。

もう出産した後なのです。

出産した後なのにも関わらず、心血管疾患のリスクが高まっているのです・・・。

 

年齢や体重、喫煙などの他に心血管疾患を引き起こしそうな原因を調整しても、

経産婦と心血管疾患の関係は変わらなかったのです。

 

つまり、タバコを吸っていなくても、若くても、体重が重くなくても、

「経産婦」というだけでリスクが高いということです。

 

 

「経産婦」と言っても何回出産しているかは違います。

 

出産回数と心血管疾患の関係はどうなのでしょうか。

 

メタアナリシスの結果、

出産回数が多いほど心血管疾患のリスクも上がることがわかりました。

しかも、直線的に上がる(比例する)のではなく、

出産回数が1回だと、0回に比べて1.11倍程度

出産回数が2回だと、1.12倍程度の微増ですが、

出産回数が3回だと、0回に比べて1.2倍

出産回数が5回だと、1.5倍

出産回数が7回だと、1.9倍

と出産回数が増えるにつれどんどんと心血管疾患が発症する危険が高くなるのです・・・。

 

妊娠する時は非常に危険にさらされる。

しかし、出産した後も病気のリスクがあがるというのです。

 

では、なぜ経産婦だと心血管疾患のリスクが上がるのでしょうか。

 

その理由はいくつか考えられますが、論文では次のようなことが理由だと考察されています。

妊娠・出産による身体の変化(ホルモンなどの変化)

出産後の睡眠・食事の変化による慢性的な炎症

出産後の環境変化によるストレス

出産後の肥満

出産後の動脈硬化(炎症による)

 

これらの出産による影響は、産後すぐだけではなくずっと続くものです。

 

うちの経産婦にも、クリスマスには何か癒されるものをあげようかな。

と思うのでした。

妊娠・出産に関わる研究の紹介はこちらもどうぞ

胎児が男の子だと産後うつになりやすい?

妊娠中の運動ガイドライン

この記事の引用元

European Journal of Preventive Cardiologyという雑誌からです。

Parity and risk of maternal cardiovascular disease: A dose–response meta-analysis of cohort studies

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