ADHDは早生まれの子に多い?

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自分の子はADHDなのか

自分の子って、なんか動きすぎじゃない?

他の子より落ち着きないよね・・・。

もしかして・・・・。

 

自分の子どものことはとっても気になるもの。

自分の子はどうしても他の子と比べてしまうもの。

 

実は、他の子どもと比較してしまうのは親だけではないかもしれません。

ADHDの診断に関する研究の紹介です。

The New England Journal of Medicineというハイクラスの雑誌からです。

 

ADHD・・attention deficit–hyperactivity disorder

日本語では注意欠陥性多動性障害

ADHDとは、自分をコントロールできず行動に問題となって表れる障害です。

集中できない、忘れっぽい、落ち着かない、思いつきで行動する

などの症状です。

 

うちの子ってADHDじゃない??

 

自分の子を見て一度は思うこともあると思います。

 

ADHDかどうかを診断するのは医師ですので、親がいくら考えてもADHDかどうかはわかりません。

しかし・・・医師の診断も、もしかしたら・・・

 

8月生まれはADHDになりやすい??

研究ではアメリカの5歳の子どものデータを収集しています。

8月生まれの子と9月生まれの子でのADHDが診断される割合を調べています。

 

なぜ誕生月で比較するのか。

なぜ8月と9月なのか。

 

それにはもちろん理由があります。

アメリカの幼稚園は年度が9月1日に始まるところが多いです。

9月1日に年度が始まるということは、

9月生まれの子と8月生まれの子を比べると、1年程度の発達の差が生まれます。

 

日本は4月はじまりですので、1-3月は早生まれと言われ学年の中で発達が遅いグループになります。

私も早生まれですので、中学生まではクラスで1番か2番に小さかったです。

今では身体も態度も大きくなってしまいましたが。

アメリカでは8月生まれが、日本の3月(4月1日も)生まれに相当します。

 

研究の結果はどうだったのでしょうか。

 

2007年から2015年にかけて、

40万人以上のアメリカの5歳児のデータが集められました。

 

8月生まれの子でADHDと診断されたのは、10000人あたり85.1人(75.6-94.2人)。

9月生まれの子でADHDと診断されたのは、10000人あたり63.6人(55.4-71.9人)。

 

その差は10000人当たり21.5人(8.8-34.0人)。

 

・・・・

 

10000人当たり21人??

これって違いがあるのか??

 

差があるかどうかを見るための「95%信頼区間」

「21人の差」は「違い」なのかどうか

上の数字の後の( )の中の数字を見てください。

これは95%信頼区間というものです。

95%の人がこの範囲に入るということです。

医学では5%(20人に1人)の例外はアリとしていて、

95%という範囲が使われるのです。

だから、「効果のある」と言われている治療法も、

最大で20人に1人には効果が出ないのですよ。

 

この研究のデータに戻ります。

8月生まれの子と9月生まれの子の差では、95%信頼区間が8.8-34人となっています。

95%の確率で8.8-34人の差があるということです。

差がない場合は0になります。

差が逆の場合(9月生まれの方がADHDと診断される場合)は、この場合マイナスになります。

信頼区間が0をまたがずにマイナスになっていないということは「差がある」ということ。

要するに、

8月生まれの方が9月生まれよりもADHDと診断されるということです。

95%信頼区間により統計学的に意味があるかどうかを見るときは、

「0をまたがないこと(プラスとマイナスどちらかしかない)」が大切になります。

0をまたがなければ、統計学的に意味があると言えます。

 

本当に早生まれはADHDと診断されやすいのか

では、本当に早生まれの子はADHDと診断されやすいのでしょうか。

 

9月1日始まりではない幼稚園を対象に検証すると、

8月生まれと9月生まれでADHDと診断される割合の差は10000人あたり8.9人(-14.9 から 20.8人

95%信頼区間がマイナスからプラスに渡っているので、

8月生まれと9月生まれでADHDと診断される割合に差がないことがわかりました。

要するに年度替わりが9月1日でない場合(8月生まれが「早生まれ」ではない場合)、

8月と9月のADHDの診断の割合には差がなかったのです。

 

じゃあ、実際にどれくらいADHDの治療を受けているのか。

これは9月1日始まりの幼稚園のデータです。

 

8月生まれの子は、10000人当たり52.9人(45.4-60.3人)

9月生まれの子は、10000人当たり40.4人(33.8-47.1人)

その差は、10000人当たり12.5人(2.43-12.4人)

 

やっぱり8月生まれは9月生まれよりもADHDの治療を受けているのです。

 

他の連続する二月(例えば4月と5月)で検証してもADHDの診断や治療に差はありませんでした。

そして、喘息、糖尿病、肥満など他の病気で検証しても8月と9月は差はありませんでした。

 

研究結果のまとめと解釈

この研究の結果をまとめると次のようになります。

年度が9月1日始まりの幼稚園に通う5歳児で、

8月生まれは9月生まれよりもADHDと診断され、治療も受けている子が多い。

他の連続する月(4月と5月など)では差がない。

他の病気(喘息、糖尿病、肥満)では差がない。

年度替わりが9月1日でない幼稚園では、8月と9月に差はない。

 

さて、この結果をどう解釈しよう。

 

年度が9月1日に変わる幼稚園では、

8月生まれの子は9月生まれの子よりも1年くらい発達が遅いことになります。

成長著しい幼児期。

この時期に1年近い差は大きいですよね。

34歳と35歳ってほとんど差はありませんが、

4歳と5歳って全然違います。

 

8月生まれの子は9月生まれの子に比べて、

落ち着きがなかったり、集中が続かなかったり・・・

そんなのことは当たり前のこと。

 

しかし集団の中にいると、8月生まれの子が目立ってしまいADHDと診断されてしまうのかもしれません。

 

論文の著者は「過剰診断の可能性」と言っています。

 

これはアメリカで行われた研究ですが、

日本でも年度で学年が区切られているのは同じ。

 

早生まれの子は他の子と比べてしまうと、どうしても落ち着きがなかったり集中できなかったりして見えてしまうかもしれません。

自分の子が落ち着きがないように見えても、

ただの月齢によるものかもしれませんね。

 

本当に落ち着きがない場合もありますが。

 

子どもに関する記事は、こちらも読んでみてください。

 

こどものその反応は本当に喜んでいるのか

論文の引用

Layton, Timothy J., et al. “Attention Deficit–Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment.” New England Journal of Medicine 379.22 (2018): 2122-2130.

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