双子がどのようにして誕生するのか知っていますか?
一つの卵子に受精することができるのは一つの精子です。
一つの精子が卵子に到達すると、受精膜が受精卵を覆いほかの精子が到達できなくなります。
では、その一つの卵子に偶然二つの精子が同時にたどり着いたとき、
受精膜ができる前に精子が二つ卵子と受精して、一卵性双生児ができる。
そう思っていませんでしたか?
これは違います。
確かによくよく考えてみるとおかしいんですよ。
だって、精子が二つ入ってきてそれぞれが受精するなら、受精卵になる前に卵子の染色体が2倍にならないといけないですもんね。
そんな都合良くいかないでしょ。
でも、「精子が同時に到達説」ってなんとなく納得できる感じもあるし、
ずっとそう思っている人も多いんじゃないかと思います。
「人体はこうしてつくられる――ひとつの細胞から始まったわたしたち」
この本を読んで、まず衝撃だったのが双子が生まれるメカニズムには3つあることでした。
受精卵から胎児になる過程で3回その機会があるのです。
その第1回目の機会は、受精時ではありません。
受精卵となって細胞分裂がある程度すすむと、卵の大きさはあまり大きくなりませんが、細胞の数は増えます。
その段階では細胞同士が緩やかに結合して塊となっている状態です。
そのときに1200例に1人の割合で、塊が2つに分かれます。
すると、それぞれの塊が完全な胚(胎児)になっていくのです。
これが一卵性双生児が生まれる原因の3分の1らしいです。
双子が生まれるメカニズムには他に2つあります。
しかし、その中の1つは発生がかなり進んでから訪れるので、
双子のうち片方が残念ながら生まれることができなかったりする可能性もあるのです。
なぜ双子が生まれるのか、なぜ双子になる機会が3回しかないのか、なぜその3回目はリスクが高いのか。
それらは人の発生を知ればよくわかります。
この本は、人の発生(生まれるまで、そして生まれてからも少し)を専門用語をあまり使わずに教えてくれます。※専門用語を使う場合は同じページ内に解説されています
「人が生まれるまでの9ヶ月の物語は、その後の70年の人生よりはるかに面白いだろう」
というのは、昔の偉い学者さんが言った言葉だそうですが、
この本を読んでいると、本当にそう思います。
受精卵から人になるまでの9ヶ月の物語を、自分がもう一度生まれるような気持ちになって追体験するのです。
そして、その物語はどんな大冒険よりもドラマチックでありながら、どんな精密機械よりもシステマティックなものなのです。
誰もが体験してきたことですが、誰も覚えていない。
自分はこうやって生まれてきたんだ。
自分が今ここにいるのは奇跡的なことなんだ。
隣にいる人も今ここにいるのは奇跡的なことなんだ。
人の発生について知ることは、私たち自信の尊さについて知ることでした。
自分を大切にしよう。
人を大切にしよう。
そう思える本でした。