身体活動量は自己申告では多くなる?

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身体活動量を増やすといろんな病気を予防します。

 

心臓病、脳卒中、大腸がん、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患・・・

そして認知症やうつ病も。

この記事では測り方の違いで身体活動量に差が出るのか?

という疑問を検証した研究を紹介します。

Cancerというガンに関する医学雑誌からです。

 

1.前立腺がんと身体活動量

がんの多くも身体活動量が予防の効果をもたらします。

しかし、身体活動量では予防の効果が小さいがんもあります。

乳がん前立腺がんなどはその代表。

 

ガンと言う病気はガンそのものによる影響に加えて、

治療による身体への影響も大きい病気です。

 

身体活動が直接的ながんの予防に効果がなくても、

ほとんどのガンでは治療後の回復に身体活動は大きな効果をもたらします。

 

この記事で紹介する研究は、前立腺ガン患者を対象にした身体活動量に関するもの。

前立腺がんの手術後は、中強度の身体活動が推奨されています(アメリカでは)。

 

測り方で身体活動量って違うんちゃうのん?

っていう疑問を検証した研究です。

身体活動量って何??と言う方は、

歩数は身体活動量の指標にできるのか?

 

身体活動量ってどうやって測るの?と言う方は、

身体活動量の測り方

 

も参照ください。

 

研究の内容です。

対象は、前立腺がん患者で前立腺全摘出術を受けた人です。

もちろん全て男性です。

2011年から2014年の間に391人が研究に参加しました。

前向きコホート研究です。

 

2.前向きコホート研究とは

前向きコホート研究とは、

仮説を立ててその仮説を証明するために、追跡して研究する方法です。

 

仮説を立てたときよりも未来にデータを測定するのが前向き研究

仮説を立てた時よりも過去のデータを集めるのが後ろ向き研究

 

大変だけどデータの価値が高いのはもちろん前向き研究です。

後ろ向き研究の場合は、膨大な数のデータが必要です。

 

2011年から始めて、2014年にやっとデータが集まる。

2014年に取り終わったデータがやっと2018年に論文になる・・・。

研究の大変さ・・わかりますよ。

とってもわかります。

私もまだ2013年に取ったデータで論文になってないのがある・・。

4年越しの論文。感無量ですね。はい。

 

話はそれましたが、

研究対象者の身体活動量を測定しています。

身体活動量を、自己申告(質問紙法)加速度計を使った機械による測定の2種類で測りました。

310人が質問紙法、81人が機械による測定を行っています。

全員に両方の方法で測定したらよかったのに・・・・。

 

基準となる測定を前立腺摘出前に行い、

術後5週、半年、1年の時点で測定しました。

身体活動は、1日にどのくらいの強度の活動をどのくらいの時間やったのかを結果として使っています。

身体活動の強さは、弱い強度、中等度の強度、強い強度で分けています。

弱い強度とは、歩く程度

中等度とは、階段や軽いランニング程度

強い強度とは、速いランニングや自転車、テニスなどのスポーツ

程度だと思います。

 

3.研究結果:自己申告の活動量と加速度計の活動量

身体活動量がどう推移したか。

次の結果は中程度から強い活動をした時間です。

自己申告で測定した群では、

術前が1日あたり32.1分(中央値)

術後5週が、15分

術後半年が、32分

術後1年が、47分

順調に伸びてますねぇ。運動してますねぇ。いい感じ

 

では、加速度計で測定した人たちは、

どの測定時も0-5.2分でした・・・・。

 

全然違うやないか!!

 

同じ人で測定していないとはいえ、違いすぎる・・・。

 

そして、この論文では次に自己申告と加速度計のデータの相関関係を調べています。

相関関係と言うのは、

どちらかが増えれ(減れ)ばどちらかが増える(減る)

と言った1対1の関係を調べるものです。

 

相関関係は0から1までの「相関係数」で関係の大きさが表されます。

相関係数が1に近づくほど関係が強く、

0.2-0.4程度を弱い相関関係

0.4-0.6程度を中等度の相関関係

0.7以上を強い相関関係があると判定されます。

 

この研究では、

中から高強度の運動が自己申告と加速度計のデータで相関関係があるかを調べました。

 

その結果・・・

相関係数は0.07-0.27・・・

ほとんど関係がないと言わざるを得ない結果・・・。

 

次に、中から高強度の自己申告のデータと、低強度の加速度計のデータで相関関係があるかを調べました。

 

その結果・・・

相関係数は0.29-0.42・・・

おっと!!

低から中等度の相関関係

 

4.結果のまとめと結論

 

結果をまとめると、

自己申告のデータは、加速度計のデータよりも高く出る。

自己申告の中から高強度の活動量のデータは、加速度計の低強度のデータと関係がある。

 

そして・・・

前立腺がん患者は中強度の身体活動が推奨されているのですが、

その根拠になっている研究は、「自己申告」による測定をしているらしい。

ということは・・・

自己申告の測定で中強度の身体活動が効果があるのなら・・

本当は低強度の活動量でいいんじゃないの??

と結論づけています。

だって、自己申告での中強度は加速度計では軽い運動なんだもの❤

 

この研究では前立腺がんの患者さんを対象にしてますが、

こういうことって他にもたくさんありそうですね。

 

引用元
Smith, Lee, et al. “Levels and patterns of self‐reported and objectively‐measured free‐living physical activity among prostate cancer survivors: A prospective cohort study.” Cancer (2018).

 

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