先日、WHOから発表された死亡原因のランキングを記事にしました。
しかしその翌日、衝撃的な論文が発表されたのを知りました。
その研究の結論は、
体力がない人は死亡率が高い。
というものです。
そりゃそうやろ!何が衝撃やねん大層な。
そうです。そんなことは既に分かっていました。
ちがうんです。
なんと、
喫煙や糖尿病や高血圧、心臓病などよりも、
体力の方が死亡率に影響する
という結果が出たのです。
その研究は、
1991年から2014年までに行われたトレッドミルによる体力の測定データを集め、
体力と死亡率との関係を調べています。
ここでいう体力とは、どのくらいの強度の運動ができるのかという運動耐容能のことです。
METs(メッツ)という指標を使っています。
METsというのは1METsを座っている時の酸素摂取量としたとき、種々の運動(活動)がその何倍の強度になるのかを表した指標です。
普通の速度で歩くのは3METs、階段は6METsと言うように決まっています。
研究の話に戻ります。
集めたデータは12万人以上!!
平均53.4歳。50%強が男性です。
その中の約1割の人が死亡しています。
体力がある順に、5群に分類しました。
低体力、中体力、高体力、かなり高体力、素晴らしき高体力。
分け方は綺麗に5分割ではなくて、
低体力が低い順に25%、中体力が25-50%、高体力が50-75%、かなり高体力が75-97.5%、素晴らしき高体力が97.5%以上です。
「最も体力の高い群」を97.5%以上(上から2.5%)にしているのは、
この2.5%というのが統計学的に「あんたらは凡人では考えられないくらい素晴らしく体力の高い人たちですよ」と言える数字です。
この5グループ、そのまま体力が高ければ高いほど、死亡率が低いという結果が出ました。
実は、この結果も衝撃の結果の一つです。
なぜなら、今までは運動はしすぎても良くない。
アスリート級の運動能力者は、スポーツ習慣のある一般人よりも死亡率が高いと言われていたからです。
今回の5グループのうち、最も体力の高い人たちは、
平均よりも標準偏差の2倍以上運動能力が高い人たちの集団です。
偏差値で言うと70以上です。
割合で言うと2.5%です。40人学級で1人いるかいないかです。
「あいつ半端ないって。クラス全員周回遅れになるもん。そんなんできひんやん普通」の人です。
結局、その人たちが最も死亡率が低かったのです。
ただ、「運動をしすぎる」ことと「体力が高い」ことは別なので、
「運動はしすぎも良くない」が完全に否定されたわけではありませんが・・・。
それにしてもこの分野の研究者にとっては衝撃なのではないでしょうか。
だって運動しないと体力高くならないからね。
最も体力の低い群と、最も体力の高い群の死亡率の違いは・・・
なんと5倍以上・・・。
最も体力低い群の平均最高METsは、6METs。階段昇る、ゆっくり自転車こぐんが精いっぱいの人たち。
最も体力の高い群の平均最高METsは、14METs。フルマラソンを3時間ちょいで走るレベルです。
伝統的に死亡率をあげる原因として、
喫煙、心臓病、糖尿病、高血圧、腎臓病・・・などが挙げられます。
もちろん、それらの原因は死亡率に影響するのですが、
この研究ではそれらの影響を考慮しても、体力の影響は消えませんでした。
それは、「喫煙などよりも体力の方が死亡率に影響する」ことを表しています。
運動不足恐ろしや・・・。
運動をしないといけませんね。
この論文の指標はトレッドミルで測った運動能力です。
喫煙や心臓病などはもちろん運動能力を衰えさせる原因になります。
だから、禁煙をしなくても良いという話ではありません。
タバコは止めましょう。
運動をしましょう。
私もデスクワークはバランスボールに乗ってやることにしよっと!
・・・という安易な考えが運動不足と体力低下を引き起こすことは言うまでもありません。
引用元
Mandsager, Kyle, et al. “Association of Cardiorespiratory Fitness With Long-term Mortality Among Adults Undergoing Exercise Treadmill Testing.” JAMA Network Open 1.6 (2018): e183605-e183605.
全文読めます→JAMAのWebサイト。