怪我をした後の、本当の意味での回復

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あの時事故に遭ってからや・・・

自転車で転んでからやわ・・・

 

私が病院で働いていた頃、よく患者さんから聞きました。

 

事故に遭ったり、転んだりしたあと、何年かたっても具合が悪いのです。

事故の後遺症はないと診断されているのにです。

 

もちろん、神経損傷など後遺症が残った場合はそれが原因で具合が悪い場合も多いのですが、

そうでない人もやっぱり具合が悪いんです。

 

なんでやろなぁと思っていろいろ話を聞いていると、そのほとんどの人が事故のあと運動量や活動量が激減してるんです。

活動量が減ると長い目で見て具合が悪くなるのは当然かもしれません。

外傷後の活動量の低下は、

診断できない後遺症と言って良いかもしれません。

 

まさにそんな人たちを対象にした研究が報告されました。

 

怪我をした後、本当の意味での回復とは?

 

研究対象は16歳以上の外傷(神経性のものを除く)を過去に経験した人。

対象者は66人で、年齢の中央値は50歳でした。

 

受傷後、3年、4年、5年目に半構造化面接によるインタビューを受けました。

 

まず、この研究の前提として、

外傷後、運動量(身体活動量)が減るということは以前からわかっていました。

そして、外傷を経験した人は一般的に、

外傷後の身体活動量の減少が、肥満などをもたらし健康に悪影響を与えていることが問題となっていました。

 

今回紹介する研究では、

外傷を負った人が、身体活動ができない原因は何なの? そして、どうしたら良さそう?

っていうのを調べるのがテーマです。

 

インタビューの結果はざっと以下のような感じです。

 

まず、この研究の対象者も外傷後に活動量が減っていました。

しかも、「動きたい」のに活動量が減っていました。

つまり、「活動をする意欲がなくなる」わけではないのです。

 

では、なぜ活動量が減るのでしょうか。

その主な原因は、

また怪我をするのが怖い。

痛みや疲れが強くなるのが怖い。

といった感情でした。

 

そして、体重が増えたり、不健康になったりすることに不安などのネガティブな感情を抱いていました。

 

当然ですよね。

怪我が治ってきても、元通りに動けるとは限らない。

そんな状況で、運動をしなければ、運動をしたいと思ってもなかなかできない。

もう一回怪我したらどうしよう・・・

って思ってしまいます。

 

では、どうしたら良さそうなのでしょうか。

 

インタビューから明らかになったことは、

対象となった人たちは、

健康保険などを活用した社会的かつ専門的なサービスはとても重要だと考えているということでした。

必要と考えているのは、

具体的な目標を立て、専門的な動機づけを行い、運動や身体活動のプログラムに参加することです。

 

つまり、専門職などの支援が必要不可欠だということです。

もちろん専門職などの「など」には、

患者グループなどの支援団体も含むと思います。

 

怪我の治療は、怪我が治ればおしまいかもしれません。

多くの国での健康保険のシステムはそうだと思います。

 

しかし、本当の意味での「回復」は5年たっても得られていませんでした。

 

いろいろな理由で健康保険を使いながらリハビリテーションを続けている人はいるかもしれません。

ただ、本当に満足のいく「身体活動」ができているのでしょうか。

例え外傷の治療が終わったとしても、

理学療法士や作業療法士などの専門職が、

活動量を増やすという目的で関わり続けることで、本当の意味での回復に近づくかもしれません。

 

活動量の減少がもたらす不利益は明らかだからです。

 

 

引用元は理学療法に関する専門誌からです。

pdfダウンロードできます。

Ekegren, Christina L., et al. “Adaptation, self-motivation and support services are key to physical activity participation three to five years after major trauma: a qualitative study.” Journal of Physiotherapy 66.3 (2020): 188-195.

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