医療系大学教育がオンラインで良いのか

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小中学校や高校は短い夏休みが終わり、2学期が始まりました。

登下校のにぎやかな声で、ツクツクボウシも出鼻を挫かれたみたい。

高校生までは当然のように対面授業が始まっているのに、何故か大学はオンラインを貫いているところもあり、

Twitterで美大生の嘆きのようなものも見ました。

通学を規制するいろんな理由はあると思いますが、大学生が大学に行けない不利益ってやっぱり多いですよね。

特に私たちのような医療系だったり、美大のような芸術に関する学部なんかは在宅で学べないことってたくさんある。

 

数ヶ月オンライン授業をやってみました。

正直、授業の大半はオンラインでできると思います。

ただ、大学って授業を受けに行くだけではないよね。

私が大学を選んだときのことを思い出して見つつ、学生と教員の両方の視点で考えてみました。

 

私が大学を選ぶとき、いくつかの大学にオープンキャンパスに行きました。

そこで見る基準は3つ。

 

研究できそうな機械がたくさんあるか。

図書館が充実しているか。

そして大学が綺麗か。

 

その他の基準として雪が少ないというのもありましたが、

とりあえず大学を選ぶ基準は「設備」に他ありませんでした。

 

大学の設備を使うという事は、大学に行ってなんぼ。

 

そもそも大学は、受け身で学ぶところではなく、自分で学問を追求するところ。

そして自分の価値観と向き合い、大人になるところだと思うのです。

知識をインプットまたはアウトプットするだけなら、オンライン授業だけやっていればいいかもしれない。

ただ、学問を追求するとなれば大学の設備や図書館を使って研究し、共に学ぶ仲間や教員と討論し、さまざまな視点から疑問を見つけだすことが大事だと思います。

 

もし自分が学生だったら・・・

 

確かに、オンライン授業のみで大学の施設に出入りできないなら、休学という選択肢は出てくると思います。

 

貴重な1年を在宅でオンライン授業を受けるだけで過ごしたくない。

 

と思うでしょう。

 

学生の時を思い出しても、

先生の話は全部忘れたけど、

口頭試問の前に友達と一緒に勉強したこととか、

一生懸命考えて発表したこととか、

実習中に患者さんに言ってもらったこととか、

そういうことは全部覚えている。

 

 

ここからは、大学教員の立場から。

 

新型コロナウイルスが大流行し始めたころ、

もちろん私の大学も全てオンライン授業になりました。

 

よし!在宅勤務や!

 

時間があるぞ!

論文を書こう!!

 

そんな風に思っていたのです。

 

 

しかし、現実は違いました。

 

オンライン授業の準備に追われ、

自宅の環境を整え、

オンライン会議、学生とのオンライン面談、オンライン・・・

 

 

結局、大学の業務に追われる毎日で、

本当に大変でした。

 

 

私たちは医療専門職の学部。

 

卒業した時に、今までと同等の知識や技術、そして態度は身につけていなければいけない。

 

オンラインでも対面と同等かそれ以上の教育効果を。

 

それを成し遂げるにはどうしたらいいか。

 

 

工夫に工夫を重ねました。

 

答えは出ませんでしたが、試験の結果だけ見ると例年通りと言ったところ。

とりあえず質は担保できました。

 

こんな状況で、もし「授業料返せ」って言われたら悲しい。

 

でも「休学」はアリかと思います。

 

 

結局、教育の業務に追われた在宅勤務期間。

 

「論文書けへんやないか!!!」

 

とツッコミを入れながら思ったこと。

 

それは、

 

「学生に会いたい」

 

そんな気持ちでした。

 

 

 

大学での対面授業が再開されて、学生が戻ってきて、

そして研究室にも学生が遊びに来たり質問に来たり。

 

 

そんな日常が戻ってきたとき、

 

 

「先生、楽しそうだね」

 

 

と学生に言われ、

 

 

そうそう、思い出しました。

学びは楽しいことなんです。

 

 

「楽しそう」な人から学ぶことって多いよね。

 

 

これが決定的にオンラインに欠けていること。

 

 

教員や友達の姿を見て、そこから学ぶ。

 

教員が楽しそうな姿を見て、

ちょっと小バカにしながらも、学修に前向きになったり、

不機嫌な教員と接して、

「なんか悪いことしたかな」と自分を省みたり、

ああいう大人にはなりたくない、と反面教師で学んだり、

 

 

育児をしながらも一生懸命学生に向き合っている教員

学生のことはそっちのけで、研究に没頭している教員

口うるさいが、言っていることは正しいのでぐうの音も出ない教員

 

先生の前ではニコニコしているけど陰では悪口ばっかり言っている学生

真面目だけが取り柄で、それをみんながバカにしているけど、成績はやっぱり優秀な学生

不真面目で成績も悪いけど何だか憎めない学生

授業はずっと寝ているのに試験の点数だけ良い学生

 

いろんな人がいるのが大学。

 

そんな人たちと共に学ぶことで成長し、

大学の施設を使って自ら考えて学習し、

自分の意見を言って、人の意見を聞いて、

だんだんと大人になっていく。

 

 

それが大学だと思うのです。

 

学生時代にしかできないこと。

それはバイトでも海外旅行でもありません。

「学ぶこと」です。

自分で学び、人を見て学ぶ。

その環境と時間が大学生には無条件で与えられるのです。

 

 

 

 

授業はオンラインでも良い。

 

 

でも大学は閉めたままではアカン。

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