キリンの首の話で、私が取り戻したものー『キリン解剖記』

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「とにかく論文を書いて実績を!!」

 

「科研費!科研費!!カ・ケ・ン・ヒ!!!!」

 

いつから私はこんな風になってしまったのでしょう。

 

大学院生だったころは、ただ単純に疑問を追い求めていたはず。

 

自律神経って身体にどんな作用があるのかな。

なんで病気と関わっているのかな。

うーん・・・単純に「交感神経」と「副交感神経」だけじゃない気がする・・・・。

 

先行研究を読み漁ると・・・・

 

なんや!全然わかってへんことばっかりやん!

 

おもしろい。

 

「~~~~~~~~な仮説が立てられるんちゃう?」

 

 

計画→実験→結果

 

やばい!これはもしかして・・・新発見!? うほほい!!!

 

 

「疑問」を追求して、単純にドキドキワクワクしながら研究をしていた日々。

 

この本は、研究者としてのそんな初心を思い出させてくれました。

私は科学書が好き。

特に動物や進化に関わる本が好きで、今まで多くの本を読みました。

「キリン解剖記」??

本屋さんでタイトルと表紙を見て、「おもろそうやな!!」

と思い、著者のプロフィールだけ見て即買い。

 

キリンの研究をしている人が書いたんやな。

キリンの8個目の首の骨??

私は哺乳類の頸椎(首の骨)がほとんどの種で7つだということも知っていたし、

理学療法士なのでヒトの頸椎の構造は一通り理解しています。

そして動物好きやし、キリンも大好きやし、キリンの解剖の本なんてめっちゃおもしろそう!!

8つ目の首の骨のこと知りたい!!!

 

そんな気持ちで購入しました。

 

そして、この本を読み、キリンや哺乳類の首の構造のことは良くわかりました。

キリンのことも益々好きになりました。

 

Amazonのレビューには、

「とてもわかりやすく、専門外の人も理解できる」

「動物園に行ってキリンを観察するのが楽しみなった」

というコメントが並んでいます。

 

私も同感です。

きっと娘と動物園に行った時、キリンの首のこと話します。

キリン大好きです。

 

 

しかしこの本を読んだ後、私を取り巻いていた感情。

それは、買ったときに予測していたものとは全く違いました。

 

 

いつも感じる、新たな知見を得た感動と言うより、

一種の不安感寂寥感、そして焦燥感が占めていました。

 

 

博士号を取得し5年。

 

大学教員の日々の業務に追われる毎日。

いつしか管理職の一員にもなり、

学生教育のこと、大学運営のこと、コロナ対策、コロナ対策コロナコロナ・・・・

研究に関わる時間がどんどん減っていきました。

しかし、その中でも求められる業績。

 

いつしか、

「論文を書くこと」

いや、

「業績を増やすこと」

が研究の目的になっている気がしてきました。

 

そして、やりたい研究をするために科研費に応募するのでなく、

業績を上げるための研究費用を得るために科研費の申請書を書いていないか??

と思い始めました。

 

しかし、それでも研究資金は大切で業績も大切。

それが自分の生活につながり、家族を守ることになる。

 

そう思いながら論文を一生懸命書いていました。

 

そんな時、この本に出会いました。

 

「キリン解剖記」は、私を10年前に連れて行ってくれました。

 

ただ自分の純粋な「知的好奇心」を満たすために研究がしたく、

そのために入った博士前期課程。

 

自分の疑問に真剣に向き合ううちに、それがさらに疑問を呼び、

迷走しながらも、点と点が線で繋がる感動。

そして自分の立てた仮説を検証し、失敗を続けながらも出された結論と新たな発見

そして再び湧きあがる新たな疑問。

 

そんな疑問を追求しながら研究をして世に出した論文。

 

それが世界中で他の論文に引用された時、

「私の発見が次の研究につながっている」

と思って感動したあの時。

自分の論文を引用した論文を読み、また国際学会で討論し、

他分野の研究者からの意見を聞き、また新たな発見。

自分の知見から新たな知見を得る感動。

自分の知識が自分の感性をさらに磨き、自分の生活を輝かせる瞬間。

 

 

果たして、「業績を積むため」だけに書いた論文が引用されて同じような感動を覚えるのだろうか。

現に、そのような気持ちで書いた論文が誰に引用されているのか、調べたこともない。

 

大学院などで共に学んだ仲間の一部が、

「権力」「名声」「地位」を追い求める姿を見て、

私は彼らとは仲良くしつつも、価値観は一線を画してきたつもりでした。

 

しかし、いつのまにか「業績」を追い求めていた自分は結局同じ。

 

 

「キリン解剖学」を読んで、研究の面白さを思い出しました。

 

本来の自分の姿に戻そうとしてくれています。

キラキラと純粋に研究を楽しんでいた頃。

今、沸々と研究に対する情熱が再沸騰し始めました。

よかった。まだ火の種は消えていませんでした。

 

私が追求するのは業績ではない。

私の疑問を追求するんだ。

 

 

この本の中に、良い出会いとタイミングの話があります。

私にも恩師との良い出会いがあります。そのタイミングは最高でした。

そして、この本。

本当に「良いタイミングの良い出会い」

30歳代。

博士後期課程終了後5年目。

というこのタイミングでこの本に出会って良かった。

著者の郡司芽久先生、ありがとうございます。

 

 

キリン解剖学を読んだあと、

自律神経の測定と行動記録を続けています。

無目的・無制限・無計画に。

 

そう、大学院に入ったころのように。

 

 

そこからまた新たな発見がある。

 

 

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