ポスターは世界をつなぐ

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シンガポールで開催された国際学会。

私はポスター発表をしました。

ポスター発表では、ポスターを会場にもっていって、指定された場所に貼るのが一般的です。

 

今は電子ポスターと言って、データを送るとディスプレイにポスターが映し出される形式もあります。

 

シンガポールでの学会では、従来通りのパネルにポスターを貼る形式でした。

 

会場にはポスターを貼る用のテープを配っている人がいました。

 

「テープをください」

 

必要な量のテープをもらってポスターを貼りに行きます。

 

ペタペタペタペタ・・。

 

ポスターの大きさは縦100㎝以上、横80㎝程度だったと思います。

それに加えて、タイトルや名前、所属が書かれたラベルを貼ります。

 

ポスターは大きいので、いつも四隅とその間を貼るようにしています。

その時も、ペタペタとポスターの上側に3か所テープを張っていきました。

 

しかし、テープがすぐ足りなくなりました。

 

ポスターは丸めて持っていくので、上部分を止めるだけだと、下の部分がくるくると丸まって、

ただのロールカーテンのようになります。

 

そうなったら、カーテンを下ろしてまでポスターを見ようと言う人はいません。

 

ポスターの下側も貼らなければいけません。

そこで、再び・・・

「テープをください」

 

私は良く人に覚えられます。

 

テープを配っている人は、私の顔を覚えていたのでしょう。

すこし怪訝な顔をしてテープをくれました。

 

テープくらい余分にたくさんちょうだいよ。

と思いながら、自分のポスターのところに戻り、ポスターの下側にテープを貼りました。

 

よし!これでOK!

さて、他の人のポスターでも見に行こっと!

 

その時・・・

 

 

 

ファサッッッ・・

 

 

 

頭の上に何かが優しく触れました。

なになに?こんな時に、誰が私にチョッカイを出してくるの?

日本から遠く離れた異国の地で。

困ったなぁ・・・。

 

 

・・・・

 

 

 

ポスターの上側が外れとるやないか!!!

 

 

私にチョッカイを出してきたのは、ともに旅をしてきたポスターでした。

 

 

再び・・・

 

「テープをください」

 

 

今度は笑いながらテープをくれました。

 

 

 

 

 

それから約1年後・・・

 

私は当時の職場で実習生を受け入れていました。

そこには、隣接している大学に来る留学生も実習でやってきました。

シンガポールの大学からの留学生です。

 

留学生が実習に来ると、

普段、必要以上にペラペラとしゃべる看護師さんや介護士さんも全くしゃべりません。

挨拶のできない日本人実習生には、陰で「あの子挨拶もできないね」と言うくせに、

留学生に対しては挨拶されても苦笑するだけ。

「あの人挨拶もできないね」とコッソリ言いたくなる。

 

 

留学生は非常によく質問をします。

答える自分も調子に乗っていろいろ答えます。

 

特に「お金」や「設備」に関する質問が多いです。

 

「なんでこんな廊下の真ん中にヘルメットがかけてあるの?」

「地震が多いからだよ」

「お~!なるほど!!」

日本=地震はテッパンネタです。

 

高齢者施設の見学で、

「この人たちの費用はだれが払っているの?」

「保険です。1-2割は自分たちで払っています」

「保険はどんな保険??」

「介護保険と言って・・・」

留学生相手には医学の知識以外にも多くの知識が必要です。

介護保険を「Care Insurance」と英訳したのは正しいのかどうかわかりませんが。

 

 

 

その年も留学生が実習生としてやってきました。

 

例によっていろいろな質問を受けます。

そして、こちらからもいろいろ質問します。

「日本で観光するの?」とか「日本は初めて?」と言うような定型質問。

だんだん質問することもなくなってきます。

しかし、その時の私にはよいネタがありました。

前年にシンガポールに行っていたのです。

 

「実は、去年シンガポールに学会で行ったのよ」

得意気に言う私。

 

「そうなの!それはGoodですね!」

という定型文での返答。

 

「シンガポールはとてもいいところだね・・・」

と言いかけたところ・・・

 

「あぁぁーーー!!!!」

と叫び声が上がりました。

 

ビックリしてその人の方を見ると・・・

「あなたテープの人じゃない!!?」

と言ってきます。

 

 

「あぁぁぁーー!!!!」

私も叫びました。

 

 

 

そこにいたのは、前年に学会会場でテープを配っていたあの人。

 

 

 

思わず、「そうそう!私はテープの人!あなたからテープを何回ももらった!!」

と「テープの人」を肯定してしまいました。

 

 

テープ係は学生スタッフだったとのこと。

 

 

偶然テープを何回ももらいに行き、

テープ係は翌年に留学生として来日し、

偶然私の職場に実習生として来た。

 

何人もいたテープ係の中から私がその人からテープをもらった偶然。

翌年に留学するという偶然。

留学先が職場に近接する大学だという偶然。

実習で私の職場で再会するという偶然。

私が学会に参加した話をして、急に「ㇵッ」と気づく偶然。

 

 

何と世の中は狭いことか。

 

 

しかし「テープの人」は真の意味ではあなたのことでは?

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