娘が大好きなおさるのジョージは大体人間でいうと5-6歳くらいの知能でしょうか。
子ザルにしては、とっても賢いと思います。
そもそも、人間とサルの違いって何?
いや、人間とヒト以外の動物の違いって?
「言語」?
「知能」?
「社会性」?
「感情」?
「道具の使用」?
さて、本当にそれらは私たちが思っているほど人間と動物で違いがあるのでしょうか。
「やったぁーーー!!」
他人が優勝したのを自分のことのように喜ぶ。
「それは辛かったね・・・」
他人の不幸なできごとを自分のことのように悲しむ。
「何かできることがあったら言ってね」
他人が大変な時に手伝おうとする。
時には他人のことで涙を流したり・・・。
だれでもそんな感情になったことがあるのではないでしょうか。
または自分に何か起こった時、他人に上記のような感情で言葉をかけられたら、嬉しくなったり、辛い気持ちが少し楽になったりするのではないでしょうか。
こんな感情は他人への「共感」と言って、集団での仲間を作ったり、円滑な人間関係を築いたり、
さらには「文化」や「社会」を形成するための重要な感情だと言われます。
「共感」の感情は、人間に特有のものなのか?
人間に近い類人猿やサルなどは他のサルなどに共感はしないのでしょうか。
もっと遠い哺乳類や爬虫類、鳥類は他者に共感しないのでしょうか。
おさるのジョージは人間に共感していますが・・・。
「共感」という感情は、長い進化の過程で築き上げられてきたものであり、
決して人間特有のものではないかもしれません。
そのような「人間とは何か」ということを多種多様な科学的実験結果や学術論文などから考えているのがこの『共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること』という本です。
人と他の動物の違いはいったいどこなのか。
そもそも違いを明らかにする必要はあるのか。
そういった疑問についてもう一度改めて考えさせられます。
「ある研究者は、人と獣を分けるものについて、言語と道徳と共感だと言った。またある研究者は人間特有のものとして傷ついた母親を子どもが抱きしめるような慰めの感情だと言った。しかし、なぜ提唱された(人と獣の)区別が、人間に都合の良いものばかりなのだろう。拷問や大量殺戮、環境破壊も同程度に人間に特殊なはずだ。なぜ人間特有のものを並べたリストはどれも自己満足の気を漂わせる必要があるのだろうか」本文より
『共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること』の後に発刊されたのが同じ著者(フランス・ドゥ・ヴァール)が書いた、『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』
「共感」を含めて様々な内容について人間と動物の違いはどこにあるのかを考察した本。
例えば、人間は「文化」を形成するが、他の種は「文化」は形成しない。だから「文化の形成」は人間特有のものなのか・・・?
そんな疑問に対して、日本サルの群れの例(イモ洗い行動をする)を挙げて反論しています。
類人猿やサルのみならず、鳥類、魚類から軟体動物まで、幅広く人間への進化の過程を調査しながら、人間と他種の違いについて考察しています。
2つの本の著者、フランス・ドゥ・ヴァールは、ヤーキーズ国立霊長類研究所の所長であり、
自らも様々な実験を重ねて多くの論文を発表しています。
反対の主張をする研究者とのやり取りや、論文での反論合戦の話など、研究者の生の声も盛り込まれています。
300ページ以上ある2冊の本ですが、すぐに読み終わってしまった・・・。
という事で、本の紹介でした。