「病は気から」という精神論を語る時代は終わりました。
しかし、落ち込んでいる時は体の調子が悪い。
気分が乗らないときは、動きたくない。
こんな風に感じることは日常的です。
実際、心をつかさどる「脳」と、体の調子をつかさどる「内臓」は本当につながっているのでしょうか。
解剖学的に調べたのがこの研究です。
詳しい研究方法は難しいので省きます。
早い話が、
「大脳皮質」と「副腎髄質」が密接につながっていた!!
というのが、研究の結論です。
大脳皮質は主に「運動」に関わる命令を出します。
「手を伸ばしなさい」「足を上げなさい」といった感じで、筋肉に偉そうに命令を出します。
副腎髄質は主にホルモンを分泌して簡単に言うと「体の調子を整える」役割があります。
さらに副腎髄質には交感神経がつながっています。
交感神経は副交感神経と合わせて自律神経といいます。
自律神経も簡単に言うと「体の調子を整える」役割があります。
運動したりするときは交感神経が、休む時は副交感神経が働いて全身を「動くモード」「休むモード」に変換するのです。
自律神経についてはこのブログでそのうち詳しく話します。
副腎髄質には交感神経がつながっています。
そのため、「動くとき」に副腎髄質はホルモン(アドレナリン)などを出して体のほかの臓器に命令を出し、
臓器を「動くモード」にします。
さて研究の内容ですが、大脳皮質と副腎髄質が密接につながっていることに何の意味があるのでしょうか・・。
論文の中でその意味について次のように言われていました。
① 運動をしようと命令を出す時、筋肉だけではなく臓器にもほぼ同時に命令を出せる。
そして、副腎髄質とつながっている神経は、大脳皮質の中でも特に体幹部の筋肉に命令を出す部分とのつながりが強かったのです。
体幹部の筋肉とは体の中のほうにある筋肉で、コアマッスルとかインナーマッスルと言われています。
すなわち、
② 体幹部の運動は、臓器に影響を与える。
さらに、副腎髄質とのつながりは大脳皮質だけではなく、帯状回やその周辺とも強かったのです。
帯状回やその周辺は、認知や情動に関わる部分です。
それらはうつ病などで特に影響を受ける部分と言われています。
すなわち、
③ 認知や情動の変化は、臓器に影響を与える。
この研究の成果は大きく①から③だと思います。
だから何なんだ、、、。
と思いましたか?
①から③を合わせるととても魅力的な結果が見えるのです。
情動の変化や気分の落ち込みなどは副腎髄質にも影響が大きく、体調に影響を与える。
しかし、副腎髄質は体幹部の運動と関係が強い。
ヨガやピラティス、太極拳などのいわゆるコアマッスルを鍛える運動は、副腎髄質にも影響を与え、
気分の落ち込みなどにも良い影響があるかもしれない。
ということを解剖学的に示したのでした。
運動によって気分が良くなるかもしれない。
うつ病の症状が良くなるかもしれない。
という素敵な結論に至りました。
盛りだくさんの論文だったので、長々となってしましました。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。
引用元は、Dum, Richard P., David J. Levinthal, and Peter L. Strick. “Motor, cognitive, and affective areas of the cerebral cortex influence the adrenal medulla.”Proceedings of the National Academy of Sciences (2016): 201605044.